体験記

中澤 亜海さん

化粧は、人と関わる一つの手段。

中澤 亜海さん/20代

  • 旭神経内科リハビリテーション病院(回復期病院)作業療法士
  • 脳卒中フェスティバル 美容班
  • 認定メイクセラピープロデューサー
    (メイクセラピー検定1級保有)

※脳卒中で麻痺がある方でも片手でメイク・ネイルを行う方法や自助具の紹介を行っています。

活動実績
  • 三輪書店『地域リハビリテーション』vol.9-14連載「化粧で生活を楽しく!」
  • 株式会社gene主催『メイクアップ×リハビリテーション 活動と参加に焦点を当てたメイクセラピーの活用』6時間セミナーの開催

リハビリテーションの分野において、化粧は「整容」という生活動作の一部に当てはまります。
歩行、食事、排泄などに比べると再獲得しなければいけない作業として優先順位は低いかもしれません。それでも私が化粧をリハビリテーションの中に組み込む のは、化粧は高齢者の方と関わるために有効な『手段』の一つであると認識しているからです。

実例を一つご紹介したいと思います。

メイクのビフォーアフター

左側の硬膜下血腫で入院され既往に認知症のある方がいらっしゃいました。この方はもともと朝起床してすぐ簡単な化粧を済ませてから家事を行っていたそうです。ところが、入院時は昼夜逆転、時間の意識が乏しく夜間は失禁が多いなど、まずは生活リズムの獲得が必要という印象でした。
そこで、朝一番のリハビリで洗顔・メイクからはじめることに。もとから化粧されていたこともあり、ご家族に持ってきていただいたファンデーション、チーク、 眉墨、リップを手慣れた手つきで済ませた後は、私と病棟内を散歩します。そうすると他のスタッフから話しかけられる頻度が増え、自然と「おはよう」「こんにちは」の挨拶があり、他者交流や容姿を褒められる頻度が増えていきます。この関わりを2週間以上継続すると、次第にご家族の面会時間を気にするといった時間 を意識した生活を送れるようになりました。

メイクのビフォーアフター

このように化粧をリハビリに取り入れることで、「認知症のある、手の掛かる患者さん」から、女性であること、誰かの母であるという当たり前のことに気が付けたり、若い頃はキャリアウーマンだった、学校の先生だったなどその人の輝いていた時期が容易に想像できるように。
化粧をした当事者の心・行動の変容はもちろんですが、それだけではなく、スタッフや支援者、家族の心にも、その後の関わり方にも、良い影響をもたらせることを日々実感しています。

※本文実例と写真実例は別の方々です

2021.7.1