体験記

豊永 純子さん

関わる人々までが笑顔になるメイクの力。

豊永 純子さん/40代

  • 看護師
  • メイクケアセラピスト講師
  • 認定メイクセラピスト
    (メイクセラピー検定特級保有)
活動実績
看護協会、病院、介護施設、看護大学でのメイクセラピー授業や講演、研修等、多数
活動領域
代替療法としてのメイクセラピー、がんの方へのメイク、エンゼルメイク

看護師である私が「患者さんにメイクを行いたい」と思ったきっかけは、自分自身の入院でした。
これまでに 看護師として多くの患者に関わってきました。看護というものはこういうもの!と、理解している自負もありました。しかし、入院して患者の立場を経験したことで、改めて「看護って何だろう?」と疑問に感じ たのです。

メイク結果に笑顔なおばあちゃん

患者だった私が感じたそのときの想いは一言で言うと「最後の瞬間まで女性らしく生きたい」という気持ちでした。私のように思う患者さんはきっとたくさんいらっしゃるに違いない。そんな気付きに対して、病気であっても障がいがあっても高齢であっても、私がそんな方々のために何かできることはないだろうか?そう 考えるようになっていきました。

そんなときに出会ったのが「メイク」でした。
メイクを学んだ後、機会をいただいた高齢者施設でのメイクボランティアで、さらに私は多くの学びを得ました。 最初は、利用者さんに「元気になってほしい」「笑顔になってほしい」という気持ちからメイクを始めたのですが、実際に行ってみると、ご本人だけではなくご家族の笑顔、ご家族の苦悩にも寄り添い、利用者さんだけでなく関わる人々みんなの笑顔を引き出すことができる、それが メイクの力なんだということを実感しました。

ご家族の笑顔

お母様を施設に預けていた娘さんがいらっしゃいました。その方は、ご自身で介護することができず、施設に預けてしまったという自責の念があり苦しんでいました。そんな娘さんにお母様のメイク後の写真をお見せすると「施設に預けることは罪だと思っていました。でも、母の笑顔を見てこれで良かったんだと思えました。」と言ってくださいました。

また、あるがん末期の女性から、自身の最期が近いことを知り自分の写真を遺しておきたいとのことで、メイクのご依頼がありました。一人で歩くことも難ししく、メイク中も会話をすることもしんどい状況。そんな中でも、仕上げの最後、ご自身で前髪をブラシで整えながら鏡の中にみたメイク姿に笑顔を見せてくださいました。そして「たとえ死ぬとわかっていても最後まで自分らしく生きたいと思っているんです。でも、私は言えなかった。だから伝えていってほしいです。たとえがんでも最後まで自分らしく生きたいと言っていいと」とお話されました。その笑顔の写真は、彼女の遺影写真になりました。

こんなふうに、「メイク」とはその人らしさを引き出すお手伝いをすることで、年齢も病気も障がいも垣根なく自分らしく生きることを実現できる一つの方法だと確信しています。

2021.7.1